口臭を抑えるお手軽な口腔内ケア方法

ここでは口腔内ケアで最も重要なポイントを解説していきます。
特に上咽頭炎や鼻炎等、鼻や喉の問題に起因する口臭で最も重要になるケアです。

マニュアル内でも説明していることではありますが、マニュアルでは様々なことを解説しているため重要度がいまいち分からないことも多々あると思います。

ここでは忙しい人でもお手軽に出来てかつ効果の高い口腔内ケア方法を解説します。

喉と鼻を擦る

方法は単純で喉、特に上咽頭と扁桃、鼻の奥を擦ることです。
これは口腔内ケアで最も手軽であり口臭を抑える効果も非常に高いです。
(上咽頭炎や扁桃炎が無い場合にはあまり効果はありません。)

要はBスポット療法とほぼ同じことなのですが大きく誤解されていることがあります。
それは、Bスポット療法で重要なのは塩化亜鉛水溶液を使うことだと思われていること、です。

Bスポット療法による口臭抑制において最も重要なことは使う薬剤ではなく、しっかりと擦るという行為です。

塩化亜鉛を使おうが、馬油を使おうがしっかりと擦らなければ、ほとんど意味はありません。
多くの耳鼻科ではBスポット療法を行う際に、しっかりと擦らずに塩化亜鉛水溶液を軽く塗布するだけのようです。

これでは意味がありません。

なぜ、擦ることがこれ程重要なのか?

上咽頭炎の膿汁はうっ滞によるもの

上咽頭炎の炎症には特徴があります。(鼻の奥で起こる炎症も同様です。)

まず、上咽頭に炎症が起こっていると粘膜、リンパ流路でのうっ滞が起こります。
これにより組織間液(膿汁)が患部、つまり上咽頭や鼻の粘膜の中や奥に溜まっていきます。

この膿汁は非常に粘度が高いことが多く、この粘度の高い膿汁に臭いのある細菌が繁殖します。
食べ物の臭いが移りやすいのも特徴の1つです。

食後に食べたものの臭いが口内に残っている。麦茶を飲んだだけでも味や臭いが口内に残る。
このような場合には、粘度の高い膿汁が上咽頭や鼻の粘膜の奥に溜まっている可能性が高いのです。

この粘度の高い膿汁は喉や鼻の奥に張り付いている訳ではなく、うっ滞、つまり粘膜の中に貯留しています。

ですので、軽く綿棒や指でなぞる程度では取ることが出来ないのです。
(副鼻腔にこのうっ滞があった場合、CT等でも膿としては、ほとんど確認出来ない可能性が高く、鼻には問題なしと診断される可能性が高いと考えられます。)

もしも膿汁が喉や鼻に張り付いているだけならば綿棒や指で軽くなぞれば取れるのですが、粘膜の中、いってみれば体内に貯留していますので、それでは取ることが出来ません。

そのため、強く擦る(こする)こと、そして何度も何度も擦ることが非常に重要になってくる訳です。
こうすることで粘膜の表面が刺激されてうっ滞を解消し膿汁を効率よく取り除くことが出来ます。

(仮にこのうっ滞の膿汁も粘度が非常に高い場合には、擦ってもなかなか膿として出てこない可能性はあります。この場合は膿の粘度を下げることが先決です。)

どのように擦るのか?

では、どのように擦ればいいのか?
最も簡単な方法は指を使う方法です。指を使えば上咽頭も扁桃を簡単に擦ることが出来ます。

指を使う場合に注意したいことは爪で引っかかないようにすることです。
爪で引っ掻いてしまうと傷になってしまいます。

傷をつけることがないように、必ず指の腹を使って擦るようにして下さい。

咽頭捲綿子(ハルトマン氏を使う)

実際には、指よりも咽頭捲綿子(ハルトマン氏)にコットンを巻きつけて擦った方が効果は高いので(特に上咽頭)、効果を求めるならば多少用意が面倒ですが捲綿子を使うことをお勧めします。

ハルトマンはこのような機器です。

アマゾンで入手が可能です。

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薬局やドラッグストアにはなかなか置いていないので、通販で買ってしまうのがお勧めです。
この捲綿子の先端にコットンを強めに巻きつけて下さい。先端はギザギザしているので、それだけでコットンが固定されます。

後は上咽頭に滑り込ませれば、そのまま上咽頭を擦ることが出来ます。
嘔吐反射(正式には絞扼反射こうやくはんしゃと言います)が出ることもあると思うので、その場合には片方の手でみぞおちを押しながらやって下さい。

どのくらいの強さで擦るか?

これは自分の加減で決めてもらっていいですが、慣れてくるとかなり強めに擦っても大丈夫です。

始めのうちは強くこすると上咽頭や扁桃の炎症が激しくなり、痛みが出てくる可能性がありますのでこのあたりは加減すると良いでしょう。

 

上咽頭を擦る

まずは上咽頭を擦ってみましょう。大まかに分けると、のどちんこの裏側の部分と喉側の部分、喉の上部(鼻や耳と繋がっている穴があるあたり)の3つに分けることが出来ます。

この3つの部位をしっかりと意識して、すべての部分をしっかりと擦るようにしましょう。
これはBスポット療法とやっていることは同じです。
抗炎症のために薬品を付けるか付けないかの違いだけ、です。

この中で特に気をつける必要がある部分は喉の上部です。耳管の出口(耳管扁桃付近)は上咽頭に繋がっていますが、この部分は非常にケアが難しい部分だからです。
耳管は内耳の内側になるので、この部分はどうやってもケアすることが出来ません。

鼻の奥は長い綿棒を使えば擦ることが出来ますが耳管は無理です。
そして実は耳管は鼻の奥と同じくらい炎症が起こっていて、粘度の高い膿汁を生み出す部位でもあります。

この部分はどうやってもケアは無理なので耳管の出口である上咽頭をしっかりケアするようにして下さい。
上咽頭の中でも天井部分には鼻とつながる穴があり、その両隣に耳管とつながる穴があります。

この耳管とつながる穴を重点的に擦るようにしましょう。しっかりとピンポイントで擦るには恐らく、指を使わないと難しいので指を使うのがお勧めです。
(捲綿子を使った場合でも、かなり慣れてくればしっかりこすれるようになります。ただ、こちらの方が嘔吐反射が出やすく、かなりの慣れと練度が必要になります。)

構造上、この部位を擦る際には爪でひっかきやすいので爪がしっかり切った上で擦るようにしましょう。

扁桃を擦る

扁桃は膿栓や膿汁が溜まりやすい部位で、この部位も擦ることによって膿汁を効率よく排出させることが出来ます。
ただ、比較としては上咽頭や鼻のように濃い膿汁は発生しにくい印象です。

扁桃の方が上咽頭よりもさらに複雑な構造になっており奥行きもあるので、表面を擦ったくらいでは濃度の濃い膿汁が出てこないのかもしれません。
膿汁の粘度が下がっている場合に、扁桃からも膿汁が出てくることが多いです。

いずれにしても、扁桃は上咽頭に比べれば、擦りやすい部位ではあるので、試しやすいと思います。

鼻の奥を擦る

鼻の奥は指では擦れないのでハクジウ綿棒のような長めの綿棒を使う必要があります。
鼻用のルーツェ氏にコットンを巻く方法でもOKです。ただ、擦ることに特化するならば綿棒でも役割は果たせるので綿棒の方がコットンを巻く手間がありませんから手軽ではあります。

舌はこすらなくて良いの?

舌は最終的な終着点です。
上記患部(上咽頭や鼻、扁桃等)が炎症して膿や細菌が繁殖し、それが舌の毛乳頭にも伝わってきていると考えて下さい。

口臭を抑制するという目的のためには舌も擦った方が良いのですが、指ではほとんど汚れも取れないです。
ですので舌のクリーニングにはW1のような舌専用クリーナーや、せめてガーゼくらいは必要になります。

舌は意外とデリケートな器官なので(そもそも内蔵みたいなものなので)、あまりやりすぎない方が良いです。

使う薬品は?

ここでは薬品については気にする必要はありません。
上咽頭炎がひどい場合には絶えず炎症によって膿汁が粘膜の中に貯留していきます。
この速度は凄まじいものがあり、わずか数時間で膿汁が溜まっていってしまいます。

そのため、炎症の程度が酷い場合には手を洗うくらいの感覚で上咽頭や扁桃を擦ってやらないと口臭抑制に高い効果が見込めません。

それだけ頻繁な回数となると何か薬品をつけるのはあまり良くありません。
塩化亜鉛にしろ薄めたアストリンゴゾールにしろ殺菌効果があります。

上咽頭、扁桃もデリケートな部位ですから、薬品を使っての殺菌を頻繁にやり過ぎることは宜しくありません。

唯一、馬油に関しては刺激も少なく頻繁に使用しても問題ありませんが、金銭的な負担も増える上に手軽さも無くなります。

薬品を使ってしまうと継続が難しくなる、頻度が下がってしまうというデメリットがあります。
そのため、薬品を使うしっかりとした口腔内ケアは朝や寝る前の2回程度に留めておき、お手洗いに行った際やお風呂に入った時等に喉や扁桃を何もつけずに指で擦るのがお勧めです。
(鼻の奥は綿棒が無いと擦れないので、どこでも気軽にという訳にはいきませんが。)

これで定期的に膿汁を出してやるだけで、口臭をかなり抑えることが可能になります。

どれくらいの時間擦れば良いのか?

上咽頭や鼻の炎症度が高い場合には、擦れば擦っただけ膿汁が出てきます。
ですので、正直キリが無いので30秒や1分等、時間を決めて擦ればそれでOKです。

より重要なことは擦る頻度を増やすことです。
お昼に1回よりも昼と夕方の2回の方が良いですし、就業前、お昼前、休憩時間の2回、夕方で5回出来るならその方が良いです。

特にご飯を食べる前に擦って膿汁を出しておくと食べ物の臭いが口腔内に残りにくくなるので、食べ物の臭いが口に残って悩んでいる場合には食べる前に擦っておくことをお勧めします。

膿汁が出るまでのタイムラグ

膿汁が大量に粘膜に貯留している場合には擦ったらすぐに膿汁が出てきます。
しかし、たいていの場合、上咽頭を擦ってもすぐには膿汁が出てきません。

時間的には数分から数十分程度経過してから膿汁が染み出してくることが多いです。

これは粘膜に貯留してある膿汁が患部を擦ったことによる血行促進によって外側に押し出されているためと予想されます。

このようなタイムラグがあるため、擦っても膿が出ないから大丈夫と考えることは危険です。
しっかりと擦った後、時間を経過させてから膿汁が上咽頭に張り付いていないかを確認するようにして下さい。

上咽頭を常にクリーニングする裏技

上咽頭を擦るには指を使うことになりますが、そうすると指は唾液で汚れます。
ですのでクリーニングは最低でも手を洗える洗面所がある場所に限られます。

ウェットティッシュがあればどこでも出来るといえば出来ますが人に見られないことを考えると場所は限られるでしょう。

そこで手を汚すことなく上咽頭を洗浄する裏技の登場です。

方法は単純で舌を上咽頭に滑り込ませて舌で擦ること、です。
これは個人差があり出来る人と出来ない人がいるようです。ちなみに私は出来ます。
訓練次第でかなりの確率で出来るようになるのですぐには出来なくても何度か試してみて下さい。

単純に舌の長い人はやりやすく、短い人には難しいかもしれません。
物理的にあまりにも舌が短い場合には届かないです。舌の長さが足りていれば舌の柔軟性をアップさせてコツをつかめば出来るようになります。
コツとしては舌先をのどちんこを触るように這わせてみて下さい。

そこからさらに奥へぐっと舌を押し込むとのどちんこがめくれて、すぽっと上咽頭に舌を入れることが出来ます。

この状態になったら上咽頭を舌で擦ります。
舌が長く、かなり舌に柔軟性と筋力が付けば、上咽頭の上部にある鼻と耳の繋がり部分、前方、喉側と3箇所全て舌で届くようになります。
舌で擦る方法は指に比べると力が弱く効果は下がりますが、いつでもどこでも簡単に出来るのは大きな利点です。

出てくる膿汁は吐き出す方が良いですが吐き出す場所が無いならば、飲み込んでしまっても構いません。

舌は擦らない?

基本的には舌を擦ることはお勧めしません。
舌は味蕾という味を感じる器官があるため、頻繁に擦ることによってダメージを受ける恐れがあるからです。

1日に1回、やさしくクリーニングするくらいなら問題ないですが、頻繁に擦ることは良くないでしょう。

また、基本的には舌が汚れていることは上咽頭や鼻、扁桃で発生した膿汁の結果であることが多いです。
ですので上咽頭や鼻、扁桃をケアすることによって舌の汚れ、舌苔の軽減にもなります。
(内蔵の問題が舌の汚れとして出ることもあるので、その場合にはこの限りではありません。)

皮膚や粘膜を強くすることが重要

始めのうちは「上咽頭を擦ったら、炎症が酷くなってしまって何度も擦るなんて無理!」ということもあると思います。

これを回避するためには皮膚、粘膜を強くすることが大事になってきます。
これはタンパク質の摂取、ビタミン類ミネラル類の摂取、オメガ3脂肪酸の摂取等が必要になります。

これらの高栄養によって皮膚や粘膜が強くなってくれば、上咽頭や扁桃を多少擦っても大きく炎症することも無いですし、また炎症してもすぐに修復されるようになってきます。

またナイアシンやビタミンC、ビタミンB群、なた豆茶、消化酵素等は膿汁の粘度を下げてくれます。
粘度が下がればそれだけ膿汁が排出されやすくなるので患部を擦った際にも効率よく排出されるようになります。

最終的には炎症自体が収まって擦る必要すら無くなることが理想ですが、そうなるにはかなり長い年月が必要です。

またアルコールの摂取や暴飲暴食によって炎症が再燃し、良くなってきていた口臭が簡単に元に戻ってしまったりもします。
そのようなケースでショックを受けて狼狽えることが無いように、まずは口腔内ケアをしっかりやり、そして頻繁に喉や鼻を擦ってあげることで口臭を抑えるという方法を覚えておくと良いと思います。

このように物理的に口臭を抑制する方法を確立しておけば、体内から発生する口臭が酷くなったとしても(これは体調や食べたもの等により簡単に起こり得ることです)ショックを受けずに冷静に受け止めることが出来るようになってきます。